産業保健分野における課題

すべての企業が産業医サービスにアクセスできている訳ではない

日本の全事業所における中小企業数は2016年時点で99.7%と非常に高い割合を占めています。(2019年版中小企業白書より)。更に総務省の報告では従業者数10人未満の事業所が2006年時点では事業所全体の約8割を占めていたとされます。現行の法律で産業医の選定が義務付けられているのは、従業員50人以上の事業所で、それよりも小規模の事業所では産業保健の恩恵を受けることが難しい現状があります。

最も支援を必要とする労働者に産業医サービスが届いていない!

また、近年の産業保健ではメンタルヘルス対策支援は充実してきていますが、治療と就労の両立を目指す支援や介護と就労の両立支援等、他の支援策は、一部の大企業を除いてまだ十分とは言えない状況です。中小規模事業所においては従業員一人当たりに対する期待値は大きく、こうした問題はより深刻に企業経営にも影響を及ぼすと考えられます。また就労者の側にとっても介護離職や治療に専念するための離職が経済面での困窮を招く要因の一つとなっています。最も支援を必要する人たちに現行の産業医活動が行き届いているは言い難い状況です。

小規模事業所にアクセスできる産業医数が大幅に不足している!

 産業医として活動する医師は現在3万人ほどで、その多くは労働者数50人以上の企業での活動に留まっているのが現状です。日本全体で約325万社ある小規模企業にアクセスできる産業医の数が圧倒的に不足していることも課題の一つと言えます。また、これらの企業には産業医の選任義務もなく、産業医の存在すら知らない小規模企業経営者も多くいるものと考えられます。

 一方で、家庭医が日常診療を行う中で多くの労働者との関わりがあり、その中には小規模企業の経営者や労働者も数多く含まれていることと思われます。もし、経営者や労働者が仕事を背景とする問題を抱えていたら、その問題が彼らの症状に影響を及ぼしているとしたら、家庭医が産業医マインドをもって診療にあたることで問題が解決する可能性もあるかもしれません。

課題の解決のために

産業医マインドをもった家庭医が増えることでこれらの課題を解決できる可能性

 産業医マインドを持った家庭医が増え、小規模事業所への産業医としての関わりが増える、あるいは労働者への診療を通じてその背後にある職場への関わりが増えることで、これら3つの課題を解決していくことにつながるものと考えております。

 本ワーキンググループは、こうした産業保健の課題に本学会会員が産業医として取り組む際の支援を行います。だだし、この活動はこれまでの産業医の活動を否定するものではなく、これまでの産業医活動を更に深化させていこうという取り組みです。私たちは、こうした学会員の支援に謙虚さや誠実さ、勤勉さを持って取り組み、社会貢献していくことを目的としています。