6月号「労働者を取り巻く職場環境について」

 

 労働者が人生の大半を過ごす職場環境。この職場環境が労働者の健康や生活習慣に大きな影響を及ぼしていることも少なくありません。今回は労働者の背後にある職場環境のことをお話したいと思います。

 

 まず、労働者を取り巻く「支援」について考えてみます。そもそも企業には労働者の生命および身体等を危険から保護する義務(安全配慮義務)が課せられております。このような義務が基本となり、企業では労働者が健康的な会社生活を送れるよう様々なレベルからの支援を行っております(経営者の考え方や企業風土によってその程度は様々ですが)。図にありますように、支援のレベルとして、職場レベル(上司や同僚からの支援)、事業所レベル(事務所や工場単位での支援)、全社レベル(企業全体としての支援)の3つが考えられます。事業所レベルでは、喫煙所を廃止する、休憩室を設置するといった職場環境改善が、全社レベルでは、就業規則や傷病休業に関するルールなどの規程・ルールづくりがイメージしやすいかと思います。また、職場レベルの支援に関して、上司がまるで父親のように親切かつ丁寧に労働者に関わってくれる職場などもあります。もちろん、これらの支援が得られなかったり、逆にこれらの労働環境や人間関係がネガティブに労働者に影響する場合(例:ハラスメント)も考えられます。

 

 次に、個々の労働者の働き方について考えてみます。非正規雇用、深夜交替勤務、リモートワーク、単身赴任、長期出張、長時間労働、オフィスワークなど、一概に労働者といってもその働き方は様々です。また、これらの働き方によって、生活習慣(例:不規則な生活時間、短時間睡眠)や健康にも大きな影響を受けることになります。以下、働き方による生活習慣への影響例を示します。

<働き方による生活習慣への影響例>

建設業のX社に従事するAさん(45歳・男性・施工管理)は、40歳を過ぎた頃から健診結果で糖尿病を指摘され、近医内科に通院してはいるのですが、なかなかコントロールが改善しません。Aさんは遠方の現場に長期出張することが多く、深夜作業にも頻繁に従事しております。出張中に治療を中断してしまうこともしばしば起こり、外食が多く、生活も不規則になりがちです。また、竣工が近くなると月100時間近い残業も発生しがちです。とうとう今年度の定期健診でHbA1c:11.0%までコントロールが悪化してしまいました。

 

 このように労働者は、良くも悪くも様々な仕事の影響を受けることになります。日常診療の中で、労働者の背後にある職場環境・働き方にも思いを馳せることも重要なことでしょう。

 

                        2021年6月

                        今井 鉄平