9月号「小規模事業所における産業保健活動の進め方」

 

 従業員数50名未満の小規模事業所を抱えている企業は少なくないことと思います。これらには産業医の選任義務はなく、大企業であっても産業保健が十分に浸透していないところがあるかもしれません。今回はこのような小規模事業所における産業保健活動の進め方について解説します。

 

 小規模事業所では、人数規模が小さくなるほど産業保健対策に遅れがみられがちです。例えば、何らかのメンタルヘルス対策を行っている小規模事業場は5~6割程度にとどまるなど、大企業と比べて対策に大きな格差があることが課題となっております。 

 

 事業所規模が小さくても、メンタルヘルス不調者への対応など、産業保健上の課題で困った経験をもつところは少なくなく、一定のニーズが存在することが予想されます。また、小規模事業所であっても、健康診断の就労判定、過重労働者への医師面接などは法令上の実施義務があり、これらが実施されていないことを労働基準監督署から指摘されるケースも増えてきました。

 

 では、なぜ小規模事業所では対策が普及しづらいのでしょうか?小規模事業所において産業医選任義務がないことは、普及を遅らせる大きな要因の一つでしょう。経営者に産業医のことが認知されていない、産業保健のために費用をかけられない、アクセスが悪い場所に会社がある、事業所数が多すぎて対応できないなど、企業側の様々な課題があることも考えられます。また、産業医を始めとするサービス提供者が、中小企業の特徴やニーズに沿った産業保健サービス提供ができていない可能性も考えられ、双方のニーズがうまくマッチしていない状況も想定されます。

 

 小規模事業所にも様々な形態があり、大企業や中小企業の中の分散型事業所として、または小規模企業単体として設立されているところが考えられます。いずれの形態でも産業医の選任義務はありませんが、大企業や中規模企業では本社などで選任している産業医の支援を受けることができるかもしれません。しかしながら、小規模事業所の事業者・管理職・従業員にその存在が認知されていなければ、なかなか支援にたどり着くことは難しいでしょう。産業医を選任していない(選任義務のない)小規模企業においては、地域産業保健センターなどが支援の窓口になりえますが、これらの存在もあまり認知されておらず、また仮に相談ができてもなかなか企業側が求める支援を得られないのが実情かもしれません。このように、企業内産業保健部門による支援を受けることができる事業所では産業保健の存在をいかに浸透させるかが、このような支援が期待できない事業所ではどのように外部から支援を提供できるかが、鍵となってくることでしょう。

 

 産業保健活動を浸透させるためには、産業保健に関する企業方針・ルールをまずはすべての事業所に浸透させることが大事でしょう。例えば、就労管理がシステム化されている事業所の場合、傷病休業者の復職の場面など、産業保健部門の承認がないと先に進めないフローを設けるなども一つでしょう。小規模事業所の事業者・担当者らに対して、産業保健部門がオープンなチャネルを持つこと、例えばメール・電話等を通じていつでも相談できる窓口をつくっておくことも大事です。そのためにも、訪問・オンラインなどの機会を使ってお互いに顔が見える関係を構築しておくことも一つでしょう。例えば、小規模事業所の責任者などが一同に会する会合などあれば、そのような場に産業保健部門からも定期的に参加し、話をさせてもらうことも効果的でしょう。

 

 産業保健支援を外部に求める小規模企業などの場合、これらのニーズに合わせた産業保健サービスの提供ができるかが鍵になるかと思われます。規模が小さい故に、ニーズが発生する場面が限られ、定期的な産業医訪問などは必要ない企業が多いことでしょう。また、1つの企業で出せる費用にも限界があることは否めません。このような企業に対して、必要な場面で適切な支援をタイムリーに提供できる産業保健サービスの存在が必要になってくることと思われます。なお、開業産業医・保健師の中で、このような小規模企業向け支援(例:臨時のリモート対応を中心とするサービス、図参照)を行っているところもありますので、インターネット等で検索して参考にされるとよいでしょう。

                                      

                         2022年9月

                         今井 鉄平