2月号「職場巡視の意義について」

 

 労働安全衛生規則上、産業医による定期的な職場巡視が義務付けられていますが、なぜ産業医は職場巡視をしなければならないのでしょうか?今回は「職場巡視の意義」を中心にお話します。

 

 まず、職場巡視の目的としては、以下の3つがあげられます。

①企業・事業場そのものを理解する

②安全衛生上の課題を指摘する

③業務内容を理解する

 

 「①企業・事業場そのものを理解する」については、職場巡視をすることで企業文化・雰囲気の一端を知ることができることがあります。例えば、非常に整理整頓が行きわたっている職場、職場にいくと従業員がみな挨拶してくれる職場、コミュニケーションを取りながら作業できている職場など、良い雰囲気をもった会社なのかなとイメージできることでしょう(逆も然りですが…)。産業保健活動を円滑に進めていくのに、その事業場のことを理解しておくのは大きな助けになります。職場巡視でイメージがインプットできるだけでも、企業・事業場の理解するのに大きな助けになることでしょう。

 

 「②安全衛生上の課題を指摘する」については、極端な例ですが、近年、胆管癌患者が多発した印刷工場のことをイメージしてみてください。職場にとってはそれ(劣悪な環境)が日常になってしまっていたのかもしれませんが、外部の産業医が職場巡視することでその危険性に気づき、課題の指摘や職場環境改善につながっていたかもしれません。休業4日以上の労働災害は決して減少傾向になく、特に中小企業においては、作業環境の改善に向けて産業医が関わる必要のある事業場が数多く存在することが予想されます。

 

 「③業務内容を理解する」については、下図に示すようなケースが発生した場合を考えてみてください。尿中馬尿酸(トルエン等の代謝物)が高値を示してますが、問診票からはそんなにばく露はなさそうな記載があります。実際のところはどうなのでしょうか?、この結果だけで職場環境に問題ありと判断できるのでしょうか?このような場合に現場を実際に見ることで、作業の内容、作業場の雰囲気等、産業医としての判断に必要な情報が一気にインプットできることでしょう。他の例をあげると、ひょっとすると我々は、毎日過酷な肉体労働をしている労働者に対して、健診結果だけを見て「もっと運動しましょう」といった単純な指導をしてしまっているのかもしれません。職場巡視で業務内容をインプットすることで、より労働者にとって有用なアドバイス・健康支援ができていくことでしょう。

 

 このように、職場巡視には3つの目的があり、どれも産業保健活動を行っていく上で非常に重要なインプットにつながる重要なものです。義務的に職場巡視をするのではなく、これらの意義を考えながら職場巡視を行っていきましょう。

 

                        2022年2月

                        今井 鉄平