7月号「中小企業における健康課題」

 

 皆さまは、日本国内における大企業の割合をご存知でしょうか?国内における大企業の割合は、約0.3%でおよそ1.2万社、大企業以外の中小企業の割合は、約99.7%でおよそ419.8万社と算出できます。こうしてみると、日本国内では圧倒的に中小企業が多い事がわかります。当然、従業員数も大企業は全従業員数の29%となる約1147万人に対して中小企業はその71%を占め約2809万人と中小企業に勤める人数のほうが倍以上に多いことがわかります。となると当然のことながら、私たち家庭医療の外来を訪れる患者さんの中に多くの中小企業の従業員が含まれているはずですが、それに気づいているでしょうか?もしくは、それを意識して診療しているでしょうか?今回は中小企業に勤める人たちの産業保健について考えてみたいと思います。

 

 私は2か月に1回、おだわら総合医療福祉会館内にある県西地域産業保健センターで労働者数50人未満の小規模事業者や小規模事業場で働く人々を対象として労働安全衛生法で定められた保健指導等の業務に従事しています。例えば、健康診断結果について事業者や労働者本人に対する指導や面接、ストレスチェックに係る高ストレス者や長時間労働者に対する面接など労働者の健康管理に係る様々な相談を事業者や労働者から受ける事業です。

 

 この仕事を通じて様々な課題を感じるようになりました。事業者は、労働基準監督署からの指導で地域産業保健センターを訪れる事が殆どですが、長時間労働者の面接はもちろんのこと健康診断事後措置すら行われていない事業場が散見されます。また産業保健に関わる部門も設置されていない事が殆どで産業保健に対する意識も低いように感じます。更に労働者本人も健康意識の低い人が目立ち、長時間で不規則な労働であっても、将来の健康より先ずは目の前の収入と考える人が多いように感じます。健康診断結果を見ていると既に複数の慢性疾患で治療中であることも多いのですが、必ずしもコントロールが良いわけでもなく、運動不足・喫煙・飲酒・不規則でバランスの悪い食生活といった生活習慣の課題を抱える人の割合が大企業に勤務する労働者に比べて多いといった特徴があるように思います。

 

 さて私たち家庭医療の外来を訪れる患者さんの健康診断の時期をご存知でしょうか?先ずは目の前の患者さんの健康診断結果を見せてもらいましょう。産業医マインドのある家庭医であれば、そこから健康診断事後措置がなされているのか?産業医や産業保健師といった専門職が職場にいるのか?産業保健担当の社員がいるのか?など職場の状況を聞く事ができるかもしれません。また健康診断結果が就業判定の基準にひっかかっていないか?を確認する事も出来ると思います。

 

 また別の視点から考えてみましょう。例えば服薬コンプライアンスが悪い、血糖のコントロールが悪いといった患者さんが目の前にいるとします。なぜきちんと服薬できないのだろう?なぜ食事療法を守れないのだろう?だらしない患者さんだと批判的な目で見る前に、その原因を考えたことがあるでしょうか?もしかしたらその人の働き方に原因があるのかもしれません。就業時間は何時間か?時間外労働時間は何時間か?休憩はあるのか?休憩は不規則なのか?食事時間は確保されているのか?など聞いてみると、その原因がいくつか見つかるかもしれません。もし長時間労働が疑われるようならうつ病チェックリスト等を施行し長時間労働によるメンタルな問題がないかどうか?簡易的にチェックしてみることも必要です。

 

 7月21日には、このような「中小企業における産業保健体制づくり」をテーマに事例検討会を開催します。たくさんの皆様のご参加をお待ちしております。

                         

                        2022年7月

                        富田 さつき