6月号「メンタルヘルス不調者の職場復帰に向けて」

 

 メンタルヘルス不調者の職場復帰に際して、再燃防止のためにも周囲の丁寧な支援が求められます。が、職場での復職支援については、何をどこまでやればよいのでしょう? 今回はメンタルヘルス不調者の復職支援について解説します。

 

 そもそも、職場復帰支援はなぜ必要なのでしょう?この理由について、2つの視点から述べます。まず、復職の時点で職場が求める水準(業務遂行が可能なレベル)にまで回復できているか、慎重な見極め(復職判定)が必要となります。十分に回復しないままの復職ですと、すぐに再発してしまい、休職期間の遷延や周囲との関係悪化などにつながってしまうこともあります。特に主治医である精神科医と産業医との間で復職可能と考える水準にギャップがあることはしばしばみられ、主治医から復職可能という診断が出されても、必ずしも職場が期待する復職水準に至っていないこともあります。このため、産業医の視点で、回復状況や職場復帰に向けての準備(生活リズム、体力や集中力の回復など)ができているかをきちんと確認することが求められます。

 

 次に、メンタルヘルス不調の再発率の高さがあげられます。この代表格であるうつ病は、基本的に精神機能が病前の水準に戻る病気とされていますが、再発しやすく、慢性化することも少なくありません。特に、1回再発を経験すると2回目の再発率が約50%、2回だと3回目が約70%、3回だと4回目が約90%と、再発を繰り返すごとにその後の再発リスクがさらに高まってしまうとされています。このため、復職後に再発を繰り返さないよう、前述の復職判定に加えて、復職後の業務負荷軽減等の職場での支援を丁寧に行っていくことが求められます。

 

 それでは、職場復帰支援をどのように進めていったらよいのでしょうか?職場復帰支援においては、「心の健康問題により休業した労働者の復帰支援の手引き(厚生労働省)」に示された5つのステップ(下図)に沿って、対応を職場と共に進めていくことが推奨されます。中小企業などメンタルヘルス不調への対応が初めてというケースもあり、その場合は適切なステップを踏まないままの不十分な復職支援となってしまうことも考えられます。産業医が関わるのは主に第3ステップ(復職判定)になりますが、そこに至るまでの手順について、職場ともよく確認しておくことも重要でしょう。

 

 いくら十分な回復が得られていても、本人の職務遂行能力は発症前と比べて低下している可能性は高いです。このため、復職面談では単に回復できているかを診るのではなく、復職後の就業上の配慮事項(就業制限内容)を検討することも求められます。一定期間(一般的には3カ月程度)は業務負荷軽減・時間外労働の免除などを行い、職務遂行能力が回復してきてから段階的に業務負荷を調整していくことも重要です。

 

 また、休業に至った経緯についても、復職面談の場面でよく確認しておくことが重要です。もし、職場環境の問題(業務の量・質、対人関係など)が発症に大きくかかわっていると、せっかく復職できても同じ問題を繰り返してしまうことになりかねません。このような場合は環境調整についても産業医・当該社員・職場の三者で検討していくことも大事でしょう。

 

 このように、メンタルヘルス不調者の復職支援には重要な意味があり、このプロセスの中で産業医には重要な役割が期待されております。必要なステップを職場と確認し、適切に職場復帰支援を行っていきましょう。

                         

                        2022年6月

                        今井 鉄平

厚生労働省. 心の健康問題により休業した労働者の復帰支援の手引き

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00005.html